不妊症の原因は、単純にココと特定できるようなものではありませんが、漢方では主に下にあげたような腎・お血(けつ)・冷えという三つの点に着目して薬を決めてゆきます。
【腎~先天の精・後天の精】
人間の生殖機能は漢方の概念で腎に含まれます。
腎は「先天の精」ともいい、これはその人が生まれながらにもっている生命力や、子孫を残す力といえます。
この腎の機能が低下した状態は腎虚(じんきょ)とよばれ、不妊症につながります。
腎虚の女性は黄体機能不全、卵巣機能不全などになり、男性の腎虚では精子欠乏症、精力減退などとなります。
「後天の精」とは、食べ物を消化吸収する胃腸の働きのことです。
胃腸の力は「気」をつかさどります。
たとえ「先天の精」にめぐまれていても、食欲がなく食べられない、食べても栄養を充分に消化吸収する力がない、というのでは自分の身体を保つのに 精一杯で、赤ちゃんをつくるところまで力が及びません。
その結果、女性であれば冷え性になったり、月経不順になったり、排卵期が定まらなかったり。男性であれば精子運動率低下などにつながります。
漢方薬で腎や胃腸の働きを整えることは体質改善に大切なことです。
【お血(おけつ)】
「お血」とは、うっ滞している血液、古血(ふるち)ともいいます。
最近の言葉で言うとドロドロ血ということです。
「お血」がたまると子宮や卵巣の血流がスムーズにいかなくなり、交通渋滞がおきます。
新鮮な血液が行き届かなくなると、排卵障害や生理不順・生理痛などを起こし、子宮筋腫や子宮内膜症などの原因にもなります。
「お血」になる背景には体質的な要因もありますが、食生活・ストレス・冷え・肥満・長期のホルモン療法なども原因と考えられています。
「お血」のある人は、生理の血液が黒っぽい色であったりレバー状の塊になって出てくることがあります。妊娠すると、おなかの赤ちゃんにたくさんの栄養をあげるために、お母さんのお腹、腰の周りには、たくさんの血液が集まってきます。
新鮮で栄養豊富な血液が滞りなくめぐっている状態、つまり「お血」の無い状態は妊娠してからも重要なことになってきます。
【冷え】
冷えは不妊症の大敵です。
下半身に冷えがあるのは、卵巣や子宮の血液循環がうまくいっていないということですから、栄養も酸素も充分にいきわたらず、子宮は冷たくなっているということです。
赤ちゃんは暖かくて居心地のよい子宮に育ちますから、冷えを治すのはたいせつなことです。
冷え症のある人と話していると「寝るときにアンカをしているので大丈夫です」とか「靴下を三枚はくようにしているので大丈夫です」などと言われることがあります。
防寒対策ももちろん大切なのですが、やはり身体の内側から暖めていかないと解決にはなりません。
漢方薬ではこんな身体の問題を解決していくことによって、妊娠につなげていきます。
漢方で妊娠された方のほとんどが自然妊娠です。
このことからも身体つくりの大切さがわかります。
また、身体つくりをしないで西洋医学的療法(ホルモン療法・体外受精・人工受精・顕微授精)を試みても妊娠するのは難しいということも同時にいえます。