【きゅうりの話】
「毒多くして能無し。植えるべからず。食べるべからず」
これは水戸黄門でおなじみの水戸光圀の言。
「是瓜類の下品也。味よからず水毒あり」これは江戸時代の儒学者、貝原益軒の言。
それぞれきゅうりについて述べたものです。
当時のきゅうりはかなり苦味の上、切り口が徳川家の三つ葉葵の紋に似ているので、食べては罰が当たると武士に避けられていた、というちょっと不憫な歴史をもっています。
きゅうりのうち95%は水分で、栄養はあまりない印象です。
おまけにビタミンCを破壊する酵素アスコルビナーゼを含むと聞くと、黄門様でなくてもちょっときゅうりをけなしたくなるかもしれません。
ところが、薬効ではすぐれた面をもっているので昔から重宝されているのです。
利尿作用があり、老廃物やコレステロール、塩分などを体外に排出してくれるので、むくみやだるさの解消に役立ちます。
きゅうり独特の「青臭さ」の成分ピラジンは血栓を予防し、脳梗塞・心筋梗塞を予防する効果があります。
また、苦味成分ククルビタシンCには抗がん作用があるといわれています。
夏野菜の代表選手としての効能はなんといっても渇きを癒し、熱を冷ますという働きでしょう。
水分補給には水や麦茶を飲むより、きゅうり一本食べた方が効果があるほどです。
食べるにとどまらず、日焼けのほてりや火傷、炎症、打撲傷に汁をすり込んだり、スライスやすりおろしたものを外用する
という民間療法もあります。
現在の胡瓜は品種改良によって苦味がほとんどなく、コリッとした食感と香りが美味しい野菜として欠かせないものです。
ピクルス、糠漬け、モロキュー、どれも美味しく、カロリーが低いので食べ始めると止まりませんが、食べすぎると過度に冷やすのでほどほどにしないといけませんね。
今日のレシピはきゅうりがちょっと苦手な人にも食べられる、冷たいポタージュです。キンキンに冷やしてお召し上がりください。
ちなみにアスコルビナーゼは酸や熱に弱いので、酢を加えたり、今日のレシピのように加熱調理するとビタミンC破壊の働きを止めることができます。