Palamoplantar Pustulosis

掌蹠膿疱症

解説

3 掌蹠膿疱症とステロイド軟膏

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和漢堂にいらっしゃる掌蹠膿疱症の患者さんのほぼ100パーセントがステロイド軟膏による治療の経験があります。
掌蹠膿疱症は発症部位が足の裏という皮が厚くて薬が浸透しにくい場所にありますから最初から強いステロイド剤が処方されます。強い薬だけに使い方も慎重にしなくてはならないのですが、誤った使い方をしている人、そもそも正しい使い方のレクチャーを受けていない人も多いようです。

薬は諸刃の剣ですから、効果が高いものほど副作用に気をつけなくてはなりません。
炎症は治まっているのに、再発予防のつもりで塗り続けたり、保湿剤のようなつもりで安易に塗るのはとても危険です。

ステロイド軟膏は炎症を抑えて皮膚の症状を和らげます。炎症とは体に侵入しようとする異物と戦っている状態つまり免疫反応ですから、これを抑えることは戦いを放棄するのとおなじこと。そのため細菌やウィルスに対する抵抗力が低下し、水虫、カンジダ、水イボ、疥癬、とびひ、ステロイドざ瘡・口囲皮膚炎・毛嚢炎・マラセチア毛包炎など厄介な皮膚病を誘発することもあります。
そのほかでは、皮膚萎縮といって皮膚が薄くなってしまう副作用があります。
足の裏などはもともと皮膚が厚いですから皮膚が薄くなるなどあまりないはずなのですが、皮膚萎縮が進んだ患者さんの手のひらや足の裏は薄皮一枚。皮膚が薄くなって指紋はなくなり、皮膚の伸縮性がなくなるので少し乾燥しただけで切れて出血したり、皮膚がつっぱって指を曲げられない状況となります。ステロイド軟膏の使用をストップしない限り、皮膚萎縮は治りませんが、一方で掌蹠膿疱症も治っているわけではありませんからやめる訳にも行かないというジレンマで、治療は非常に困難になってくるのです。

ステロイド軟膏は皮膚症状を和らげても原因を治しはしませんし、副作用で皮膚が無防備で弱くなると、治療はこれまで以上に難航します。
和漢堂にいらっしゃる掌蹠膿疱症の患者さんは10年、20年といった病歴を持つ人も多く、ステロイドで一時的に治って再発、再度ステロイド治療、再発というのを何年間もくり返して来ています。

掌蹠膿疱症は身体の内側に原因があり、それが皮膚に現れてくる病気ですから、ステロイド軟膏が一時的に症状を抑えている間に、原因をしっかりと治していかなくてはなりません。
なかにはすでにステロイドによる治療に限界を感じている人もいるかもしれませんが、急にやめると今まで強い力で押さえつけてきたものが一気に表面化しておそらく大変辛い思いをするでしょう。

当店で漢方薬を飲みながら掌蹠膿疱症を治した方は炎症がひどくなってきたらその部分だけにステロイド剤を塗ってしっかりと抑え、炎症が治まってきたら薬の入っていない保湿剤に切り替えるということをくり返して次第にステロイド剤を塗る範囲や回数を減らしています。たったそれだけ?と思うかもしれませんが、漢方薬で症状を改善しつつの二刀流だからこそ出来ることで、漢方などのサポートなしにステロイドを減らすのは難しいのです。